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SHARP PAL用 ビデオデッキ(ブラウン管式テレビ付) VT−3700H 
デッキ部分 VY85HVT 修理作業メモ        
(2020年5月23日 記)

(2021年6月7日 追記)

  イギリス在住時使用していたPAL式 VHSビデオが、テープローディングの異常で使えなくなった。
  アナログ式PAL方式なので、TVのがデジタル化で もはや世界中どこででも使えなくなった代物であるが、
  当時録画したテープが再生できないのはつまらない。
  新型コロナウイルスで外出できない状況下の時間を活用して修理を試みた。
  以下はその作業記録です。

  テレビ付 PAL方式 TV付ビデオデッキ 外観 
   TC-K55の外観写真
   ★ PAL方式 テレビ付VHSビデオデッキ(VH-3700H) 1995年製
  


MEMO

1. 故障症状
 ・TVは正常に動作する。(もちろん放送が無いので映像は写らない)
 ・VHSテープカセットが正しくローディングされず、カセットが吐きだされる。
  不良モードは二つある。
  - カセットは吸い込むが、ヘッドにローディングされない
  - カセットの吸い込み途中で吐きだす。


2. 内部構造
  まずはTVセットを解して、内部構造を調査した。

 <内部全体 上部TV部>
  
  ・外側ケースを開けると普通のTVと同じ感じです。 
   ブラウン管には1万ボルト以上の高電圧の電気が溜まっているので取扱注意。

 <取り出した TV基板とテープデッキ>
  
  ・たくさんあるコネクタや、ネジ穴には、再組立時の為に マークを付けた。

 <デッキ 概観>
  
  ・アナログノイズ防止の銅テープ、電源フィルターがある。

 <デッキ内部 上面>
  
  ・デッキ上面メカ部分

 <カセットホルダをはずす>
  
  ・カセットホルダ(制御機構が反対側の上方に写っている)を外したようす

 <デッキ内部 下面>
  
  ・ベルトプリー(小)はキャプスタンモーター。
   巻き取り、巻き戻し軸の駆動にも使われている。
  ・手前の円形は、回転ヘッドモーター。

 <テープ走行系>
  
  ・キャプスタンモーターで駆動される中程のギヤが移動してリール台を回す。

 <回転ヘッド>
  
  ・PALは25f/Sなので NTSV 30f/sより 回転速度が遅い。

 <送り出し側テープリール台>
  
  ・駆動ギヤは上下2段になっていて、巻き戻し、逆転再生時で切り換える。

 <巻き取り取り側テープリール台>
  
  ・駆動ギヤは上下2段になっていて、巻き戻し、逆転再生時で切り換える。
  ・再生時のバックテンション用のブレーキベルトがある。

 <カセット取り出し、テープ走行アーム駆動用のモータ>
  
  ・手前のベルトはカセットローディングコントロール、他方は走行経路の各アーム制御用。

 <カセット引き込み・取り出し駆動制御系>
  
  ・回転軸のクラッチは、定置で自己切断。接続時はピンチローラの位置で機械的に制御している。
   PCBに クラッチ状態検出SWがある。

 <カセットテープ状態確認用光学センサ>
  
  ・光でカセットテープに中を覗いてテープ終端の透明部分を検出する。

 <カセット挿入確認スイッチ>
  
  ・カセットが挿入されていることを機械的スイッチで検出する。

 <カセット位置確認スイッチ>
  
  ・カセットがテープローディング位置に下がったことを確認するスイッチ。

 <テープEND 検出光センサ
  
  ・テープ終端の透明リーダーテープを読み取る。

 <テープローディングアーム>
  
  ・テープローディングアームスライド部分のグリスを除去して再度シリコングリスを塗布した。


3. 原因調査と対策
 ローディン系のモータープーリーを指で注意深く回して、ローディングの仕組みを調査した。
 たくさんの部分が複雑な動きをする。ローディング制御は2系統の円盤カムで制御されている。
 ・原因調査
 1)カセット吸い込み、掃きだし制御機構
  マブチモータ外側のプリーの角ベルト(Vベルト構造)で駆動されている円盤カムで制御されている。
  この軸には、クラッチがあり、カセットの吸い込み、掃きだし以外の期間は動力が伝わラない仕組み。
  クラッチは カセット降下カムとピンチローラのアームの位置によって、接・断が制御されている。
  カセットのローディング機構に特に問題はなかったが、ローディング完了時にラッチを切り換えるのに
  大きなトルクがひつになるが、ベルトが滑ると切り変わらず確認SWに伝わらないでエラーとなる。

 2)テープローディング機構
  マブチモータの内側のプーリの角ベルト(Vベルト構造)で駆動されている円形カムで制御されている。
  ピンチローラ、テープローディングアーム、リール駆動ギヤ、バックテンションブレーキなどが制御されている。
  プーリーを指で回して行くと、円形カムの特定の位置、すなわち、テープローディングアームが動く位置で急に
  プーリーが重くなる。そのため、ベルトが滑ってしまいローディングが正常に出来ないようだ。
  原因は、主にベルトの滑りと、ローディングアームの滑走面のグリース粘度が上がり大きな抵抗に
  なっていることのようである。

 3)キャプスタンモーターと巻き戻し、巻き取り機構
  駆動元はキャプスタンモーターで主なっている。モーターのフライホイール外側に ブレーキパッドが
  ついていて、両リール台の巻き取り制御ブレーキに使われている。

 ・対策
  - 上記 2)のスライド部分の抵抗を軽減する。
    古いグリースの除去。メチルアルコールをつけた綿棒で擦り落とした。
    KERE556で綿棒につけて、表面をクリーニング。
    楊枝でシリコンクリスを滑走面に塗布した。
    → この処置で動きは軽くなった。
  - 巻き取り側のフェルトブレーキ側をメチルアルコールで掃除。
  - 円盤カムの溝の稼働範囲の摺動部分に、シリコングリスを少し追加。
  - 各ベルトをアルコールで拭いた。

4.再組み立てをして確認
 −テープは正しくローヂン具され、再生もうまくいった。
 −しかし、
   @テープの初めの部分の巻き戻しお力が弱いことと
   A逆向き再生すると短時間でSTOPしてしまう障害は改善されなかった。
    → 後で分ったことだが、これはキャプスタンモータのベルトの滑りが原因である。

 <再生のテスト>
  
  ・一応修理完了です。 
   録画してあった PAL方式の番組が正常に再生された。
   


(追記) ベルト交換修理メモ   2021.6.6
・その後しばらく放置していたが、薬1年後、確認のためSWを入れてみたところ以前と同じ現象が起きた。
・仕方がなく、再度同じ工程で分解してメンテをした。 合わせて各動作を細かくレビューした。
・本質的な原因はベルトのスリップ。 ベルトとプーリをIPAでクリーニングし組み立てて試験をすると
 OKになった。初めの1回だけ逆方向再生もできた。
 しかし 1日後、また同様な症状に戻ってしまった。 がっかり !!
・気を取り直して再度分解。ベルトを注意深く観察すると、各ベルトは劣化していて、若干伸びて、
 表面には細かいひび割れで覆われていた。
 この製品は合計使用時間は少ないが、1995年製(26年前)の古い製品であることを考慮すると、
 ベルトとプリーを清掃しても、同じ結果になると予想できるのですべてのベルトを交換することにした。

・使用されているベルト
@ 主制御機構用のベルト
  ・マブチ型小型モータの内側プーリーと制御カムメカプーリー間
   内径 26mmφ 太さ 1.7mm 角ベルト 1本
A カセット引き込みセット機構用ベルト
  ・マブチ型小型モータの外側プーリー と カセットローダメカプのプーリー間
   内径 30mmφ 太さ 2.0mm 角ベルト 1本
    → 太さ 2.0mmは 販売されていないので 太さ 1.6mmで代替え
B リール用駆動機構用ベルト
   キャプスタンモータプーリー と リールギヤメカプーリー間
   内径 75mmφ 太さ 1.7mm 角ベルト 1本

ベルトは千石電商で購入したが、同じ規格の物がない。できるだけ類似の次のベルトを購入した。
 直径(内径)は同じ物。 (Aは内径26mmが無いため 小さめの内径25mm)、太さは全て1.6mmの各ベルトとした。
 価格は全て 同額で 1本 168円 (送料350円) 、
 モータ側のプーリの直径が小さくため、ひび割れが起こりやすく、寿命が短いと予想されるので
 内径 25mmと39mmのベルトについては予備も購入した。
 (その他)
 ついでに、 エモテータ用 内径 31mm 2mmφ 丸ベルト も予備品として購入した。

・ベルト交換の結果
・VHSデッキは快調になった、これまで不調であった、巻き戻しや 逆再生機能も蘇った。
 ベルトの耐力に期待しよう。

・今回の新たな発見
1) 両リール台の駆動メカ制御は、1本の棒状のカムで行っている。
  この棒の位置によってカセットローディング完了(マグネットスイッチ)を検出している。
2) カセットローディング機構内に、カセットローディング完了(クラッチOFF検出)スイッチを見つけた。
  クラッチOFFのラッチ機構と連動している。このラッチ機構でカセットローディング完了検出スイッチを駆動している。
3) ピンチローラのON/OFFも含めてほとんどの制御は、カムで行っている。
  コストを追求したスゴイ機構だが、各滑り部はシリコングリスを塗り直したものの寿命は長くないかも知れない。

<注意>
組み立て時、ブラウン管側の前側ハーフケースに回路基板を載せたデッキを挿入するとき、
取り付け位置合わせの穴(ネジ無)に、ケーブルが鋏込まれやすいので注意。
配線ケーブルが挟まれてしまうことに気が付かずに、組み立てに長時間を浪した。
(デッキ正面左下LED基板下の配線の取り回しに注意)

 <ケ-ブルの取り回し>
  
  ・組み立て時に ケーブルが取り付け用の穴に挟まってしまう。

  
  ・ケーブル固定スペースに取り回す。 これですんなりとケースに納まった。



すべての機能がスムーズに動くようになって、BBC等、昔PALで録画したテープが見られるようになった。

メデタシめでたし (^_^)